転写調節領域
転写調節領域と構造遺伝子
当たり前のように、転写という言葉が使われていますが、専門用語の一つだと思うので説明をしますね。遺伝子というのは、あくまで設計図であって、生体のダイナミックな機能を担っているわけではありません。実際に、身体を動かしている主役はタンパク質なわけです。遺伝子はタンパク質を合成するための鋳型みたいなものだと思ってください。
遺伝子の情報がタンパク質となるためには、転写と翻訳という2つの過程を通らなければいけないのです。転写とは、DNAの情報がメッセンジャーRNA(mRNA)というヒモに写し取られ、その情報を核内から細胞質に運び出すことです。翻訳とは、細胞内のリボソームという所で、mRNAからタンパク質を合成することです。
転写調節領域と構造遺伝子の模式的な絵を下に示してみました。転写調節領域には、プロモーターとエンハンサーと呼ばれる領域があるのが分かると思います。その2つ以外にも、転写を抑制するサイレンサーと呼ばれる領域があることも分かっています。基本的にプロモーター部位が転写開始の土台となります。この領域には、転写調節因子と呼ばれる種々のタンパク質が結合し、転写の開始を準備します。
エンハンサーとは、転写量を調節しているところと考えてください。この部位にも、各種の転写調節因子が結合することが分かっています。今回の話の中では、このエンハンサー部位に、Engrailed という名の転写調節因子が結合するかしないかで、ショウジョウバエの斑点のパターンが異なるということを示したのです。
羽に黒い斑点がついている昆虫達 (Nature Vol 433 News & Views pp466)
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